『Scream 7』を観て思い知った、”帰還”という名の残酷さについて

Scream 7 映画レビュー
© The Movie Database (TMDb)

『Scream 7』を観た。シリーズへの愛着と、もういい加減終わらせてくれという矛盾した気持ちを抱えたまま劇場の椅子に座り、二時間弱を過ごした。終わったあと、しばらく席を立てなかった。感動とか興奮とか、そういう明快な感情ではなく、もっとざらざらした何かが胸に残ったからだ。

シドニー・プレスコットが「戻ってきた」という事実の重さ

正直に言うと、冒頭でネーヴ・キャンベル演じるシドニーが画面に現れた瞬間、私は泣きそうになった。前作で出演を見送った彼女が再び立っている。それだけで物語の外側にある「現実のドラマ」が透けて見えてしまい、フィクションとノンフィクションの境目が溶けるような不思議な感覚に包まれた。あの佇まいには、もう若さの鎧がない。代わりにあるのは、何度も死線をくぐった人間だけが持つ、乾いた覚悟のようなものだった。コートニー・コックスのゲイルもまた同様で、二人が並ぶシーンには、脚本が用意した以上の意味が勝手に宿ってしまっている。長くシリーズを追ってきた人間にとって、それは恩寵でもあり、呪いでもある。

一方で、新世代キャストのイザベル・メイ、ジャスミン・サボイ・ブラウン、メイソン・グッディングの三人は、それぞれに健闘していた。特にジャスミン・サボイ・ブラウンの芝居には、スクリームという看板がなくても成立するだけの生々しさがあった。ただ、レジェンド二人の存在感があまりに重く、新旧のバランスが最後まで均衡を保てなかった印象は否めない。

メタの刃が、今回は自分自身に向いていない

スクリームというシリーズは、ホラー映画のルールを登場人物が言語化するという「メタ構造」で革命を起こした。その遺伝子は7作目にも受け継がれてはいる。けれど、観ながらずっと引っかかっていたのは、今回のメタがどこか「安全圏」にとどまっているということだった。

かつてのスクリームは、ホラー映画を愛しながらホラー映画を解体し、その行為自体が恐怖になるという離れ業をやっていた。ケヴィン・ウィリアムソンが脚本だけでなく監督としてシリーズに携わる今作、ファンとしては期待するなという方が無理だった。だが蓋を開けてみると、メタの矛先は業界批判やリブート文化への皮肉に向かいがちで、物語の内部を食い破るような狂気にまでは至っていない。ゴーストフェイスの造形も、声の演技(ロジャー・L・ジャクソンはやはり唯一無二だ)も健在だが、「犯人は誰か」というミステリーの強度がシリーズ屈指とは言い難い。中盤で提示されるいくつかの手がかりが、終盤の種明かしと噛み合わない箇所があり、伏線回収の精度にばらつきがあるのは気になった。

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「帰還」は誰のためのものだったのか

それでも、この映画が私の中に残した傷は小さくない。それはシドニー・プレスコットという人物が背負わされてきた「サバイバー」の物語を、もう一度突きつけられたからだ。

ここだけの話、私はスクリームを「怖い映画」として観たことが一度もない。ずっと「生き延びてしまった人間の映画」として観てきた。愛する人を殺され、信じていた人に裏切られ、それでも立ち上がり続ける女性の物語。7作目ともなると、シドニーの帰還は「ファンサービス」として消費されかねない危うさを孕んでいる。実際、そういう側面もあった。でも、ネーヴ・キャンベルの目がそれを許さなかった。あの目には「また来たのか」という疲労と、「それでも来た」という意志が同居していて、画面越しにこちらの胸ぐらを掴んでくる。

スクリームは結局のところ、恐怖を通じて人間の執着を描くシリーズなのだと思う。犯人側の執着、生存者側の執着、そして観客である私たちの執着。7作目まで追いかけている自分自身が、もうこの構造の一部に組み込まれている。

終わらせることの、途方もない難しさ

完璧な映画ではなかった。脚本の綻び、新旧キャストの不均衡、メタ構造の鈍化。指摘しようと思えばいくらでも言葉は出てくる。でもそれらを差し引いても、シドニーとゲイルが画面にいるだけで成立してしまう時間があった。それをご都合主義と呼ぶのか、シリーズの蓄積と呼ぶのか。私にはまだ判断がつかない。ただ一つ確かなのは、「終わり方」を模索し続けるこのシリーズの姿が、終われない現代のフランチャイズ文化そのものの鏡になっているということだ。

恥ずかしいけど、エンドロールが流れている間、初めてスクリームを観た高校生の頃の自分を思い出していた。あの頃の私は、ゴーストフェイスが怖くて仕方なかった。今は、ゴーストフェイスよりも「これが最後かもしれない」という予感の方がずっと怖い。

体感点数:64点

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