—
『スター・トレック:スターフリート・アカデミー』を観た。正直に言うと、最初の数エピソードはかなりわくわくしていた。あのスター・トレックの世界で、アカデミーという「始まりの場所」を舞台にするというアイデアは、シリーズに馴染みのない人間にも、長年のファンにも、両方に向けて開かれた入口になりうると思っていたから。
The Pop Score
Rating based on impact and craft.
物語の中に引き込まれた瞬間
スターフリート・アカデミーという場所は、宇宙艦隊の精鋭たちが育つ学び舎だ。そこに集まる若者たちのそれぞれの背景、それぞれの夢、それぞれの傷。序盤は、そういった群像劇の素材がぎっしり詰まっていて、私はすっかり夢中になっていた。
特に、ホリー・ハンターが演じる人物の存在感が序盤を引き締めていた。「この人がいるかぎり画面が締まる」という感じで、ベテランの佇まいというのは本当に説明のつかない力を持つのだと改めて思い知らされた。若いキャスト陣Sandro RostaやKarim Diane、Kerrice Brooksたちも、それぞれのキャラクターに個性を持ち込もうとしている熱量が伝わってきて、恥ずかしいけど何度か目頭が熱くなる場面もあった。未来を夢見る若者たちの物語って、どうしてこんなにも刺さってしまうのだろう。
でも、もうひとりの私が引っかかり始める
ところが、中盤あたりから冷静に分析してしまう自分が顔を出してきた。
エピソードを重ねるごとに、キャラクターの成長が「都合よく」訪れすぎる。困難にぶつかり、悩み、そして一度の会話や出来事で劇的に変わる。その繰り返しのリズムが読めてしまうようになると、物語への信頼が少しずつ揺らいでいく。伏線として丁寧に置かれたように見えたモチーフが、回収されないままエピソードが終わったときの宙ぶらりん感。「あれはどこへ行ったんだろう」と思いながら次のエピソードに進むうち、少しずつ「乗れていない自分」を発見してしまう。
演出の面でも、感動させようとする意図が先走ってしまっているように感じる場面があった。音楽の持ってきかた、台詞の間、カメラの寄り方どれも「ここで泣いてほしい」という設計がちらちら透けて見えて、そのたびに私の没入が一歩後ろに下がってしまう。TMDbのスコアが5.0という数字も、なるほどそういうことか、と腑に落ちてしまった。
「若者の成長物語」に何を期待しているのか
ここで少し立ち止まって考えてしまうのだけど、私はこの作品に何を求めていたのだろう、という問いが頭から離れない。
スター・トレックというシリーズが長い歴史の中で問い続けてきたのは、単純な宇宙冒険ではなく、「人間とは何か」「異なる他者とどう共存するか」「正義とは誰のためにあるのか」という、かなり根の深いテーマだ。アカデミーという舞台は、そのテーマをまだ答えを持たない若者たちの視点で掘り下げる絶好の機会だったはずで、だからこそ序盤の期待値が高かった。
ところが物語が進むにつれて、その問いが丸められていく印象を受ける。対立は和解に向かい、疑問は肯定的な答えで着地し、成長は明るい方向へと収束する。それ自体が悪いわけではないけれど、あの宇宙の複雑さと比べると、描かれる人間模様がどこか平べったく見えてしまう。George HawkinsやBella Shepardが演じるキャラクターの葛藤だって、もっと踏み込んで見たかったと思う場面が何度もあった。
観終えて、私の中に残ったもの
作品として完璧ではない。でも、完全に裏切られたとも言い切れない。若いキャスト陣の熱量と、ホリー・ハンターの存在感と、スター・トレックの世界観そのものの豊かさそれだけで最後まで観続けられたのは事実だ。シーズンを重ねることで脚本が成熟していく可能性も、まだ信じたいと思っている自分がいる。
映像ソフトや配信についての情報は以下から確認できる。
🎬 Amazonでこのドラマを観る・購入する
「スター・トレック:スターフリート・アカデミー」をAmazonで探す / Star Trek: Starfleet Academy(英語)
※Amazonアソシエイトリンクを含みます
スター・トレックの宇宙が好きで、その入口を探しているなら観て損はない。でも「あのシリーズの深み」を期待して飛び込むと、少しだけ肩透かしをくらうかもしれない。私はそれを経験した側の人間として、正直にそう伝えておく。
体感点数:54点
🎬 Amazonでこのドラマを観る・購入する
「スター・トレック:スターフリート・アカデミー」をAmazonで探す / Star Trek: Starfleet Academy(英語)
※Amazonアソシエイトリンクを含みます
作品情報:The Movie Database (TMDb)


コメント