「Rooster」を観た。正直、観る前はそこまで期待していなかった。スティーヴ・カレルのコメディときいて、「ああ、笑えるやつね」くらいの気持ちでいた。ところが観終わってから数時間、なんとなくその余韻が抜けない。これは一体なんだろう、と思ってキーボードを叩き始めた。
笑いながら、気づいたら引き込まれていた
最初の数エピソードは、素直に声を出して笑った。スティーヴ・カレルのコメディセンスはやはり本物で、あの独特の「空回りしているのに憎めない」空気感は健在だった。Danielle DeadwylerやPhil Dunsterとのやりとりも絶妙で、テンポがよくて、気がついたら次のエピソードに手が伸びている。
The Pop Score
Rating based on impact and craft.
恥ずかしいけど、あるシーンで笑いながらじわっと目が熱くなった。笑えるのに、なぜか胸のあたりが痛い。コメディってたまにこういうことをやってくる。油断させておいて、急所を突く。その瞬間、「これはただの笑える話じゃないな」と思い始めた。
でも冷静に見ると、引っかかることもある
没入しながらも、もうひとりの自分がずっと観察していた。
正直に言うと、中盤の展開がいくぶんご都合主義に感じられるところがあった。キャラクターが急に思い直すシーンがあって、「そこに至るまでの内面の変化が、もう少しほしかったな」と思ってしまった。丁寧に積み上げてきたはずの人物像が、物語の都合で動かされているような違和感。こういうのはコメディドラマにありがちではあるけれど、それでも引っかかってしまう自分がいる。
Charly CliveとLauren Tsaiのキャラクターも、もっと掘り下げられるポテンシャルがあったのに、どこか輪郭が薄いまま終わった印象が残った。勿体ない、という感情がある。ジョン・C・マッギンリーが出てきたときは「この人、もっと出番くれ」と心の中でつぶやいた。
配信はまだ続いているし、もしかしたら続編でそのあたりが補完されるのかもしれない。気になる人はぜひチェックしてみて欲しいところDVDや配信情報はこちらから確認できる。
「Rooster」というタイトルが意味するもの
雄鶏、というのは面白い選択だと思った。雄鶏は朝を告げる生き物で、威勢よく鳴くくせに実際はそれほど強くない。見栄を張っていて、本当は臆病だったりする。スティーヴ・カレルが演じる人物のことを考えると、このタイトルはかなり意図的に選ばれているような気がしてくる。
人間って、社会の中でずっと「何者かであろうとする」生き物だと思う。笑わせようとする、強く見せようとする、必要とされようとする。この作品が描いているのは結局そういう、ひどく普遍的な人間の焦りではないか。コメディという形式を使いながら、「なぜ人はそんなに必死に鳴き続けるのか」を問いかけているような気がして、そこに妙な切実さを感じた。
笑えるけど、笑えない部分を大切にしている作品
TMDbのスコアが7.3という数字を見て、「ああ、これくらいの温度感の作品だよな」と妙に納得した。絶賛されるほど完璧ではないし、けれど確かに何かを残す。そういう作品がいちばん正直だと思うし、私はわりとそういう作品に惹かれる。
笑いながら人間の哀しさをすくい取るコメディが好きな人には、刺さる部分があるはずだ。完璧なドラマを求めているなら少し肩透かしを食うかもしれないけれど、「なぜあの人はああいう選択をしたのか」を考えながら観るタイプの人間には、きっとじわじわくる。私がそうだったように。
体感点数:71点


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